学部長・研究科長メッセージ

 文部科学省の「大学における工学系教育の在り方に関する検討委員会(以下、大学工学教育検討会)」(中間まとめ、2017.11)では、工学系教育改革の実現に向けて講ずべき重点施策の具体的な制度設計等について取りまとめられています。これまで以上に「工学の変革」が強く求められています。これにどのように対処したら良いかを考えますと次の3点が挙げられます。

◆学域制導入による一学科コース制の推進と実質化
 長崎大学工学部は、2011年に一学科コース制と5年一貫博士課程を導入し、分野の枠組みを越えた横断的教育と実践的教育が充実した総合力の高いカリキュラムを導入しました。これは、現在の大学工学教育検討会で議論されている工学系教育改革の先駆けとして、全国で初めて実施してきました。その優位性を活かして、一学科コース制のさらに充実し、実質化を図るとともに、2019年度から導入される総合生産学域制にも積極的にかつ柔軟に対応していかなければならないと考えています。

◆STEM教育からSTEAM教育へ
 2020年度からの情報データ科学部の新設が予定され、また、教養教育に「情報基礎」に加えて、「統計学」、「データサイエンス」の新規導入が計画されています。AI、IoT、ビッグデータ、ロボット等の導入により産業構造が急速に変化する中、いつの時代にあっても基本的に不変である工学専門基礎教育を充実させ、工学の諸分野に応用できる基本的な資質と能力育成が重要です。これまでさまざまな工学分野において、ハイテクを駆使して取得される精確な生データは、データサイエンスにも不可欠な貴重なデータです。このようなデータを私たち自らデータサイエンスの技術を用いて、技術開発研究を行って行く必要があります。さらには、新設情報データ科学部の最先端のデータサイエンスやAI技術との協働により新たな展開が生まれることが期待されます。
 そのためには、まず、工学の基盤となるSTEAM科目群(Science, Technology, Engineering, Art and Mathematics)の体系化し、充実することが必要です。また、21世紀型スキルとも言われる、批判的思考力、問題解決能力、コミュニケーション力等のリテラシー的スキルや計算論的思考(Computational Thinking)の授業は、前記の大学工学教育検討会で議論されている工学系教育改革の中味と合致するものです。

◆文部科学省の新しい評価・資源配分の仕組みの導入への対応
 文部科学省と経済産業省により「組織」対「組織」の産学官連携の実行・実現に必要な具体的な行動等について取りまとめた「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン(2016.11)」が策定されています。2019年度文部科学省予算にも、新しい評価・資源配分の仕組みの導入について、外部資金獲得実績(共同研究、寄附金等)等を配分指標にすると明記されています。今後の大学運営費の減少は必至ですので、公的・民間外部資金を獲得して教育・研究費や運営費に充当する必要があります。そのためには産学官連携を柱とした研究プロジェクトの創設と持続的な推進が不可欠です。各プロジェクトごとに持続可能な発展(SDGs)をも考慮した理念を掲げ、その理念と解決シナリオの策定にあたっては、本学名誉教授等の外部アドバイザーが支援するようなシステムの構築を考えています。

 長崎大学では卒業式で文鎮が配られていた時期がありました。その文鎮には「高きより高きへ」という意味のラテン語“Ab Alto Ad Altum”が刻まれています。長崎大学の強みは、東シナ海に面した海外文化の導入・導出拠点であった立地的特異性の中で、原爆投下という社会的ダメージを受けたにもかかわらず、復興させた実績、社会的課題に対するソリューション能力を育んできた実績にあります。それゆえに“NAGASAKI”いう名は世界中の人々に知れ渡っているのです。
 上に示すような、教育改革を推進するとともに、長崎大学のモットーである“Ab Alto Ad Altum”の下に、今後30年を視野に入れ、「いかなる時代にあっても社会の先導者であり続ける工学教育研究拠点」という新たな研究推進体制を立ち上げ,『Look Nagasaki!』と言われるべく工学研究科を目指したいと思います。
 皆様方からのご意見を広く頂戴して合意形成を図り、より良いものとした案を実行したいと考えております。「高きより高きへ!」

工学部長・工学研究科長
松田 浩